« シベリア少女鉄道「残酷な神が支配する」 | トップページ | オリゴ党「新・ユウサクセブン」 »

2006年7月29日 (土)

ジョン・クランコ バレエ・スクール

ジョン・クランコ バレエ・スクール(7月25日 兵庫県立芸術文化センター)
 '60年代にシュトゥットガルト・バレエ団を育てたジョン・クランコ(John Cranko)の理念のもと、'71年に創設されたスクールのメンバーを「ひょうごインビテーショナル」で13年ぶりに招聘。共演メンバーも公募して県内3ヶ所と大阪2ヶ所での公演となった。
 プログラムは前半に「パキータ」「白鳥の湖」(いずれも凡庸)に続いて、モダンの作品を2つ。
 まずロランド・ダレシオ振付の「陽に映える雪の如く」は、公演チラシにも写真が使われていたようだが、男女のペアがアンニュイなタンゴ調の曲(音楽=ペーター・シンドラー)をバックにコンタクトのヴァリエーションを豊かに展開する。面白いのは、二人のオレンジ色のシャツが、特に伸びる素材でできているのか、ビヨーンと足首まで伸ばしたり、相手を包み込むようにしたりといったことを見せること。支配・被支配の関係というより、包含する欲求を表わしているようで、ユーモラスな色合いもあった。特に明確にストーリーや設定を提示しているわけではなかったが、男女間の争いのような動きも、男が自分のシャツの中に女を入れてしまったりすることで、事なきを得たのだなと安心できたり、音楽の特性でやや緊迫した雰囲気を醸し出しながらも、ちょっと抜けた感じが流れていたのも不思議だった。
 二人の動きの中で目についたのは、リリース(弛緩)の流れが美しくタイミングも的確だったこと、スライディングが流れを切ることなくいい余韻を湛えていたこと、リフトのタイミングがひじょうに柔らかで美しいこと……要するに穏やかさと洗練された鋭利さが両立した時間の流れが実現していたのがよかった。
 続く「人形」(振付=アルベルト・メンデス)は、男女の人形のすれ違いをユーモラスに描いた悲しい物語。人形ぶり、豊かなリフトのヴァリエーション、男の大きなジャンプ、など高度なテクニックに乗せるには、軽いショートショートのような内容で、好適だったといえるだろう。
 休憩を挟んで女性ダンサー15人による「グラズノーフ組曲」(振付=深川秀夫)。完全なシンメトリーによる美しい群舞、そこそこ魅力的な数名のソロ(日本人らしいメンバーもかなりレベルが高いと思われた)が順序よく配置されたもので、女性ダンサーたちのレベルを理解させるにはちょうどよい作品だったといえるだろう。
 続いて男性ダンサー8人による「トロイ・ゲーム」(振付=ロバート・ノース)。演舞か琉球の組踊りのように感じられたのは、二人一組の男性ダンサーが、声をかけ合ったりしながら腰を落として次々と型を見せるような動きを続けたからか。実際、尺八を使った音楽が流れたりもしたから、東洋的ということをかなり強く意識した動きであったのだろう。残念ながら、これ自体は、さして瞠目するほどの動きや身体ではなかった。
 バレエ界で男性ダンサーが存分に踊るということ自体、かなり珍しいことなのだ。チラシのこのスクールの解説に「特に男性ダンサーの充実がめざましい」と書かれているだけのことはあって、このような作品をトリに持ってきたのだろう。ユーモラスな動きやコミカルな構成、すさまじいばかりの運動量と強烈なアピール力によって、見て楽しい作品となった。ただ、コンタクトや動きのヴァリエーション自体はそれほど豊かでなく、コミカルな面とマッチョな面だけで終始したので、もっと違う面も見たかったと思ってしまった。カーテンコールで特に彼らの表現力が発揮され、最終的な後味はよかった。

|

« シベリア少女鉄道「残酷な神が支配する」 | トップページ | オリゴ党「新・ユウサクセブン」 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: ジョン・クランコ バレエ・スクール:

« シベリア少女鉄道「残酷な神が支配する」 | トップページ | オリゴ党「新・ユウサクセブン」 »