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2006年8月11日 (金)

TAKE IT EASY!「葬儀屋オペラ」 8月5日

TAKE IT EASY!「葬儀屋オペラ」 8月5日 神戸アートビレッジセンター
 全員神戸生まれ神戸育ちのチャーミングな女性が歌やダンスを含めた総合的な表現を展開し、座付き作者の中井由梨子のスケールの大きなファンタジスタとしての構築力と思想的にも大きなテーマに立ち向かう蛮勇のようなものが奇妙に共存した、「立体少女マンガ」とも称される微妙なユーモアセンスとちょっとした非現実感が魅力。……TAKE IT EASY!(テクイジ)を見続けている理由を200字程度で説明すると、こういうことになるだろうか。

 今回の「葬儀屋オペラ」は、人生の最後をどのように迎え、送るかが最も重要、終わりよければすべてよし、とばかりに5人の葬儀屋が立ち向かう難問の数々、といった全5話のオムニバスタイプの音楽劇。登場する役者が子役も含めて21人+バンド、という大規模であることもテクイジにとっては初めてとか。

 5話とはいいながら、すべてが独立・完結した形で提示されるのではなく、入れ子になったり引きずったり続きがあったりと、リゾーム的な構成をとろうとしている。実際に死んでしまった人間はといえば、ドラッグストアチェーンの社長、かくれんぼの最中に過って死んでしまった男の子の二人だけで、あとは死にきれない自称芸術家、ペットのチワワ、物。このように様々な工夫を凝らしてヴァリエーションを豊かにしようとしたのだろうが、それが趣向にとどまりドタバタしてしまって、この劇が臨終の場面や死というものをどのように捉えようとしているのかという基本的なスタンスが見えにくくなったのではないかと思われる。

 また、タイトルに「オペラ」と付したように、音楽やダンスを多用した作品であったが、それをもっと効果的にするためにも、全体の単純化や簡素化が必要だったように思う。シリアスで重要な役を客演に振り、テクイジの面々は外枠の狂言回し的な立場に終始したのも、もったいない。この劇の構成上、葬儀屋たち自身にはドラマが乏しく、スタイリッシュにかつユーモラスに立ち振る舞いはするものの、ドラマを盛り上げる役どころでなかったことは、残念だった。

 通底する大きなテーマのようなものを探れば、きっちりした終わりを迎えさせてほしいと望む者の声、ということにでもなるだろうか。第2話「犬のお葬式」の主人公は、チワワに人間のような名前を付け人間の恋人のように愛してきた無邪気な女(田所草子。フリー)。彼女はその死体を抱いたまま、アイスクリームを買いに来ている。この設定も田所の演技も素晴らしかったのだが、女がチワワの死を受け容れるに至るプロセスがわかりにくく、ついていきにくい。テクイジの葬儀屋たちが、手を変え品を変えて、過去を呼び起こさせたり現実に向き合わせようとするが、女は頑迷である。それが「星になりたいから」ということで説得できるという結末だから、やや肩透かし。最後まで夢見る元少女、現実を見れない女であったわけだが、もう一ひねりするか、ひねらずストンと落とすかしたほうがよかったのではないか。

 もちろん、そんな簡単にドラマチックに人間を変えられるわけがないと言われれば、その通り。理詰めで他人が変えられるほど人間は単純でも計算通り動くわけでもない。「いたずらっ子のいたずらな死」と題された第5話は、かくれんぼが大好きな男の子(楠陽介。子役、小学校2年生)がその最中にマンホールに隠れてしまい、母親(石井テル子。劇団アクスピ)が見つけたときには既に息絶えていたという悲劇。母親は息子の死を受け容れることができず、錯乱している。現実を受け容れられなくなっている母親が、ようやく息子の死を受け容れ、穏やかに息子を送ることになったところでの「もういいかい」「まあだだよ」…「もういいかい」「もういいよ」で息子が客席へ消えて行くところは、この劇のクライマックス。しかしここに至る道のりにも、第一話「金持ちの爺さん」の遺産相続でドタバタしている兄弟の物語が貫入してきたのは、感動を削ぐだけに終わってしまったように思う。

 おそらくここでは、複数の物語を重層化させることで、螺旋のような時間や平面のうねりが生じることを期待したのではなかったか。しかし、うねらせるには、いたずらっ子の死というドラマはあまりにしっかりとした悲劇でありすぎたし、遺産相続の諍いを他愛ないゲームで解決しようとしたり、奇妙に昂揚した葬儀屋たちの姿は此岸的でありすぎた。

 葬儀屋たちについては、衣裳といい命名といい、現実離れした妖精のような存在であろうとしたのではないかと思われるが、5人のキャラクターに明確な描き分けがなく、これまでのテクイジの活動を見続けてきたファンが持っているイメージに頼れる範囲内の個性であったのも残念。

 ライトコメディとしては随所に光るものがあったし、他者の死を受け容れるというテーマはそれだけで重く大きく、改めて一つの作品にまとめ上げることもできると思う。今回は、やりたいことをいろいろとマルチにやってみたということだろう、次の展開に期待したい。

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 過去にテクイジについて書いたものをご参考まで。

投稿: じょうねん | 2006年8月15日 (火) 22時31分

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