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2006年11月18日 (土)

デス電所「夕景殺伐メロウ」

デス電所「夕景殺伐メロウ」 11月16日精華小劇場(~19日)

 実は初めて観た。だから、断定的にこういう劇団だとかいうようなことは言えないし、けっこう客演も多かったので、これだけ観てどうこうというのは適当ではないかも知れないけど、2時間15分(長っ!)にわたって退屈するシーンはなく、演劇的に楽しめた。
 終盤までほとんどわからなかったが、犯罪被害者の集まりが「粒子」という狂信的な集団と化して、「先生」と呼ばれる存在からのお告げをミッションとして遂行している。絵画の中の女カナ(奥田ワレタ。クロムモリブデンから客演)の持っているラジカセからその言葉は発せられ、その姉ハナ(山村涼子)を通じて「先生」とのコミュニケーションはなされているようだ。集団の神秘化のために(おそらくはハナを通じた「お告げ」によって)、1年前にメンバーはカナを殺害して裏の焼却炉で燃やしたようだが、実は過去にハナ(とカナ)は自宅に放火し、両親を死なせているらしいことも終盤に明らかにされる。ハナが集団の中で疎外されているらしいこともわかってくる。
 その集団へ本部から送り込まれたと見え見えのごまかしで進入してくる謎の女がナガサワ(羽鳥名美子。毛皮族から客演)。彼らが新たにミッションでとして与えられた「演劇」に乗じて、自分のシナリオをあてがい、1年前の殺人事件の真犯人を明らかにしようとする。
 というふうに、この劇の筋というか骨格だけを取り出して振り返ると、全体の矛盾点や物足りない点はいくつでも挙げられるだろう。犯罪被害者の集団だというのに登場人物の屈託ない脳天気さはなんだとか、ハナとカナの複雑な関係性はもっと描き込むべきだとか、最後に死にかけてクバ(福田靖久)がハナに告白するのがあまりに唐突とか。
 しかし、この劇の主眼は、そして観る者が観るべきは、きっとそういうところではないのだと思う。筋とか骨格とぼくが呼んでいるものは、実はこの劇にとっては暫定的な枠組みであって、それがいじめ自殺であろうが、大学教授の痴漢であろうが、とりあえずは何でもよかったのではないだろうか。とりあえず何かしらそれらしい枠組みを作っておけば、その中で何でもできる。そういう型枠としての筋や骨格だと捉えた方が、妥当なのではないか。
 その型枠の中で、本当に何でもやる。今振り返っても、どうしてそういう展開になったのかたどりにくいような、強引な形で劇中劇(スカトロ・ミュージカル)が進行したり、何度も素敵なダンスシーンが見せられたりする。それらのエンターテインメントとしての強いシーンは、本当に役者たちも楽しそうに全力を出しきっていて、決して色物的な扱いではなさそうだ。そういう意味では、一時期第三舞台などではやったダンスシーンの多用ともまた違ったニュアンスであるらしいことが見えてくる。
 第三舞台らがダンスシーンのダンスを軽んじていたとは言わないが、劇の本筋からいえば付属物のようで、ダンスシーンがなくても劇は成立するものだったと思うが、この劇からダンスシーンがなかったら、見せるものとしての彼らが望む世界とは、著しく異なるものとなってしまうだろう。
  はからずも、見せるものという言葉を使ったが、おそらく彼らは見せるもの、観て楽しいものとしての演劇ということを強く意識しているのだろう。それは、歌舞伎やバレエに似ている。筋書き自体は、一応仇討ちとか悲恋といった大枠はあっても、本当に見せたいのは舞踊であったり大立ち回りであったりするわけで、それによって観る者の体温が急上昇し、とってつけたような筋書きにも、ついでに感動するといった仕掛けのものもある。それで特に不満は持たれない。
 この劇も、別にそういうストーリーである必要は全くない劇中劇や、携帯電話の電源は切りましょうという歌とダンスや、けっこうスリリングな戦闘シーンなどで体温を上げ、ちょっと歪んだ人間関係や姉妹の複雑な関係の設定などで考えさせるという構図によって、歌舞伎的な成功を収めていると言っていいだろう。多少注文をつけるとしたら、筋の部分をもっと太く明快に(単純にでもいいが)してくれたら、もっと無邪気に興奮することができたのではないか。一度観ただけでは、謎として残ってしまっている部分も多いのだ。そういう意味でも、歌舞伎のように何度も観れる芝居を目指しているのかもしれないが。

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