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2007年4月19日 (木)

baghdad cafe「サヨナラ」2月10日

baghdad cafe「サヨナラ」 2月10日 ロクソドンタブラック

 中心にあるのは、姉(一瀬尚代)の不機嫌さ。それを軸に、複数の物語を一つの町を舞台に綴れ織りのように編み込んでいき、しみじみと別れを味わう物語に仕立てることができていた。
 姉は、まず弟(勝山修平。彗星マジック所属)の存在が我慢ならない。この町が嫌い。昼間の介護センターでの仕事でも、お年寄りの存在が面倒くさくてたまらない。詳しくは語られないが、天涯孤独で、弟とは血のつながりがないことを知っている。幼い弟はロケットで遊んでいてばっかりで、食べ物の好き嫌いもあり、いちいち癇にさわる。何かのトラブルでかバブルの地上げでか、借家も瓦礫と化した。夜の勤め先であるスナック(?)も同じ理由で瓦礫と化した。世界は彼女に笑顔を見せないし、彼女も世界に笑顔を見せない。
 スナックのママ(大津裕子。ホネつき数珠'S所属)とグラサンの地上げ屋ヤクザ(成瀬トモヒロ、劇団kuskus所属)とのドタバタな応酬。介護センターにいる元教師でダンス好きのおじいさん(岡部雄一郎。コレクトエリット所属)やおばあさん(溝口裕子。oki-doki所属)の淡い心の通い合い。仕事がうまく行かないサラリーマン(岡部、二役)がなぜか宇宙飛行士になって、隕石の衝突を回避させるまでの様々な述懐。そんな小さな町で、スナックが壊されて女の子たちがちりぢりになったり、おばあさんが死んだり、弟が私淑している博士(成瀬、二役)の開発したロボット(森佐夜子。oki-doki所属)が事切れたりと、いくつもの「サヨナラ」がある。
 この町に10年前に起きた洪水によっても、傷ついたり大切な人を失ったり、多くの「サヨナラ」があったのだろう。たとえばおじいさんは、あの時、妻と一緒に出かけていれば、一緒に死んでしまえたのにと悔やむ。この劇は、阪神・淡路大震災をふまえているようにも思える。災害によって壊滅した町という設定、瓦礫、といったモチーフがそう思わせるのだ。災害という特異点を置き、そこから時間を遡行させることで見えてくるような世界であったわけだが、過去の洪水と、迫り来る隕石の接近という、二つの災害の狭間にこの世界を置いたことで、この世界の不安定さが増した。
 姉は、その洪水という災厄によって、両親をはじめ大切な人やこの町の大切な愛おしいものをなくしたのだろう。しかしラスト近く、いよいよ隕石による世界の終わりが近づき、超常的な現象で弟の実母(よしだ☆じゅんこ。abish・oki-doki所属)が現れ、弟を引き取ると告げると、「笑顔で別れてやるわよ」という一種の啖呵を切りながらも、「なんでこんなに涙があふれてくるのよ」と、初めて感情を吐露する。続いて「サヨナラがそれでも何かの始まりなら、ちょっとこの町を好きになれるかも知れない」という意味の述懐があり、隕石の接近による世界の終わりも回避され、劇は終わる。
 あんなに嫌っていた弟との別離、しかも本当の肉親(自分に肉親はいない)との対面という形での別離を目前にして、初めて味わった感情。弟という存在の発見である。実はそれは他の物語ともシンクロしていたのだろう。そのようなことを経て、やっと姉は笑顔でサヨナラが言えるようになり、この町がちょっと好きになり、弟の存在も受け入れられるようになる。町で生起するいくつものサヨナラの物語が、姉の中にしみこんでいく、長い長い癒しのプロセスの物語であったと読むことができる。
 綴れ織られた一つ一つの「サヨナラ」の物語が、じわじわとボディブローのようにからだの奥に響き、悲しみが染みわたってくる作品であった。破綻や無理、強引さもあるが、宇宙の時間をこの町にも流れさせようとした思いがあらわれてのひずみであると思われた。
 役者たちは、決してうまいわけではないが、この世界を生きているという存在感があり、舞台での姿が大きく見えた。一瀬の徹底した不機嫌さ、できれば最後にすべてを溶かすような笑顔を見せるまでに物語も展開してほしかったような気もするが。勝山の屈折した少年らしさは、みごと。若い役者に老人役は難しく、岡部も溝口も苦労していたが、物語の強さもあってさして違和感なく見ていられた。同様のことは博士のにも感じられたが、これは衣裳も一因。白衣の下の黒いカットソーが、博士と呼ぶには違和感があって、慣れるまで時間がかかったが、ロボとの絡みが深まるに連れて、物語に没入させられた。
 垂れ幕のような布を使った舞台美術は、宇宙とも水中ともつかぬ魅力的な空間を創り出し、秀逸だった。宇宙の物語、水没した町、その双方を思わせ、その狭間にあるこの現実をよくあらわしていた。場面転換で役者が輪になって静かに歩き、次のシーンの登場人物が残るという展開も新鮮だった。

http://fhp.from.jp/baghdadcafe/

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