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2007年4月25日 (水)

東京ガール「Cafe in the Milk」4/6

東京ガール「Cafe in the Milk」 4月6日 ロクソドンタブラック

 なかなかテンポのいい、愉快な芝居だった。男優だけで、倉庫を舞台にしているので、竹内銃一郎の「大ガラス」やカクスコの舞台を思い出しもし、確かに少しそのような味わいもあった。大いに笑わせてもらい、大変楽しめたのは確かで、その上でいくつかのことを指摘し、考えていきたい。
 劇の大枠として、ありきたりの倉庫に突然喫茶店ができたという不思議なことなのに、倉庫の制度や組織自体がどうもいい加減で、従業員も滅茶苦茶、逆に喫茶店のほうがまともに存在していること、もっとうまくやれば不思議な不条理感をもたらしただろうが、そこまではたどり着かず、逆に違和感をもった。カフカではないが、既存の組織を絶望的なまでに堅牢に描いたほうが、その状況の奇妙さが際立ったのではなかっただろうか。筋違いのない物ねだりをしているかも知れないが、倉庫の従業員たちが最初はすごくしっかりしていて、それが喫茶店ができたことを契機に次々と崩れていくような作り方のほうが、面白かったように思う。
  舞台美術は、遠近法がゆがんだような壁面で、奇妙な空間を作り出していた。不用意に関係ないところが開いてしまうというアクシデントが初日にはあったが、シモ手の隠し扉が他の扉と続いていた、というのは話の筋に関係なく思えた。
 もちろん、すべてが主筋に関係しなくてはいけないとは思わないが、この芝居には主筋に関係なく受けを狙う小ネタが多かったように思う。
 たとえば、作業員の工藤(福井優介)をすごい猫舌に設定して、いつまでもコーヒーが飲めないとしたが、結局のところは一口飲んでしまっていて、他の者と同じように腹痛に襲われる。結局腹痛を免れたのは、同僚にいつもコーヒーを奪われてしまって、一口も飲めないままの一人ということだが、工藤が猫舌云々というエピソードは、なくてもよかったように思えてしまう。
 また、推理小説を読んでいる客の井口(斉藤コータ)に、周囲が次々と犯人をバラしてしまうシーンなど、面白くはあるのだが、マスター(安井竜児)の客への踏み込みの度合いにおいて、ややバランスを欠いたと思えた。
 繰り返されるので、重要なモチーフかと思われたことの一つに「ものがなくなる」ということがある。コーヒー、帽子、果ては主任(鈴木宏志)。これもまた、一貫していたにもかかわらず、主筋との絡みは薄く、そのためにややくどいように思われた。
 となると、改めて、この劇の主筋は何だったのかということを確認しておきたくなる。勤務態度のはなはだよろしくない従業員のいる倉庫に、ある日突然ひじょうにおいしいコーヒーを出す喫茶店ができる。ややあって、倉庫自体が閉鎖されることになるのと並行して、喫茶店容認派と排斥派に分かれて争うことになったかと思うと、皆ばたばたと倒れる。実は喫茶店のマスターを装っていたのは、皆が見たこともない当の倉庫会社の社長で、従業員の働きぶりを偵察に来ていたのだった。
 繰り返しになるが、よけいな小ネタとしか言えないような、必要のないエピソードはたくさんあった。だから、観終わって何日も経って、いざキーボードに向かうと、否定すべき個所がたくさんある。うっかりすると、観ているときにあんなに楽しんだことを、忘れてしまいそうになる。これは一体どうしたことなのだろうか。
 一つ考えられるのは、この劇の面白さや興奮が、刹那的なものに過ぎたのではないかという否定的な見方だ。全体としては破綻していたのに、細部では笑いをとっていた、バラバラなコント的な仕上がりのものだという見方。社長が実はコーヒーに薬を入れていて、みんなバタバタ倒れていくというシーンも必要なければ、両手に荷物を持った作業員がドアを開けられなくて壁の向こうで長時間立ち往生するというシーンも必要ないと考える。劇の細部はすべて主筋に収斂されるべきであって、一見無関係なものも、実は伏線として張られたものだったということが最後にはわかると、そういう作り方であるべきだという考え方だ。
 一方で、その裏返しで開き直ったような言い方になるが、刹那的な細部の集積が現実を形作っているのだから、演劇がその2時間前後の時間を無関係な細部を積み上げることで構成されていたとしても、それは一つの現実というものの把握の手法であるということもできる。ただ、観客はどうしても一つの演劇作品の中には一つの世界を求めているので、ある程度の統一感、一本の筋を求めるのが普通だといっていいだろう。
 この作品は、実験的なほどにはバラバラではなかったが、ざくっとした主筋に面白そうなコントのようなエピソードをペタペタと貼り付けた作品であるように思われた。もちろんそういう作り方もあっていいし、面白いものができてくる可能性も大いにあると思う。今後もこのような手法で作り続けていくのなら、エピソードの面白さ、役者の演技力、細部へのこだわり、主筋の強さなど、全体的にさらに徹底して力を強めていく必要があると思う。
 タイトルの「ミルクの中のコーヒー」というのは、考えてみれば普通とは逆で、うまい思いつき。「倉庫の中の喫茶店」「喫茶店の中の倉庫」とか、釈迦の掌の上でジタバタしている人間たちとか、いろいろなことを考えさせる。

1台3役!!オーブントースターグリル&コーヒーメーカー

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