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2007年4月18日 (水)

空中☆分解企画『それはまるでメロスのように』3月16日

空中☆分解企画『それはまるでメロスのように』3月16日ロクソドンタブラック

 わけがわからないと言われるのは承知の上、とにかく疾走する芝居を作りたかったよ
うで、スピード感、全体の統一されたトーン、めくるめくような展開が観ていてとても
楽しかった。次々と変わる場面や設定を追いかけるだけで精一杯という状態に身を置か
れたが、決して不愉快ではなく、むしろジェットコースターに乗っているような快感が
あった。
 衣裳は全員白いツナギ。どうにでもなるようでいて、うっかりするとどうにもならな
い恐れもあったとは思うが、それぞれの場面や役柄に応じて、よく染め上げた。シンプ
ルな舞台装置も、どうにでも見せることができ、一定の効果を出していたといえるだろ
う。
 役者たちも走りやダンスの体のキレがよく、観客に見せる身体としてよく鍛えられて
いると思われた。主役格の桑原孝史は、姿も声もよく、さわやかな存在感がある。高坂
陽子は効果音役(?)のあっけらかんと開き直った姿が面白かった。根本沙織はこの中
ではアイドルタイプかもしれないが、演技が着実で、表情がよくできている。
 しかし実は、根本的なところで疑問が残っている。劇を展開させていくのは、作劇の
現場。ズーッと進んでいたシーンに突然素の声で「そうじゃないだろ」とダメ出しが入
り、意見の衝突があって引き戻されたりする。つまり、稽古場かどこかからビヨーンと
ゴムが伸びるようにあるシーンが作られ、勢いが出てきたなと思うと、ゴムが縮むよう
にまた稽古場に戻って、また違う方向性が出されてビヨーンと出ていき、しばらく疾走
するとまた稽古場に戻る、そういう繰り返しだったわけで、稽古場に戻るたびに、楽屋
落ち的にトーンが下がり、やや興ざめしてしまうようなところがあったように思う。
 もちろんそれは、一つの構成の方法として面白いと言えなくもない。混沌の中を疾走
するスピード感を出すためには、ありったけの多くの要素を乱雑にぶちまけて、それを
一気に抜き去っていくような勢いが必要なのであって、あえて脈絡のない多くのモチー
フを羅列するために、この仕掛けはうまい動力源だったという一面もあったかもしれな
い。ただ、一つの物語を深め、役者が一つの役を演じきるためには、この構成は物足り
なかった。
 物語にはいくつもの流れがあるが、最も太い筋は母探しといえるだろう。その他、思
いつくままに列挙すると、ガガーリン「地球は青かった」、銀行強盗、月面着陸→月の
ウサギ→因幡の白ウサギ、野球、腹痛と下痢、足跡の化石発掘とテレビ報道、シンデ
レラ、父を施設へ入れようとしている家族、数学の授業の無限数の話、三千里…、
それらがある時は自然に、時に無理矢理結び合わされて、新たな物語を作ったりもする。それらが一貫して均質な速度感とエネルギーをもって流れていることが、この劇の美点である。そのことが単調にならず、勢い込んで前のめりになって観客に働きかけてくる強さ
となった。
 それは少なくとも、台本を読んだだけでは決してわからない、演劇としての魅力であ
る。もしかしたら、演出以前の、若さとしか言いようのないエネルギーの発現でしかな
いのかもしれないが、それを客演も含めて、ためらうことなく出しうる場を作れたこと
は評価したい。
 多くのモチーフに埋もれて、タイトルにも使われた「走れメロス」の線は「どうして
走るんですか」「待ってる人がいるからじゃないですか」「本当に待ってますかね」と
いった短い会話に収斂され、細く印象に残りにくかったように思えるが、むしろ全体の
トーンにかかわるものだったと解したほうがいいのかもしれない。走り続けることによ
って、何か非常に大切なものを守ることができるという信念。それが「母をたずねて三
千里」と重なり、無限数が決して1にはならないことや光速で走ってもたどり着かない
という喩となり、というふうに舞台の上の疾走感とテーマが併走するスリルを楽しめた。
 このように、一貫して散乱した世界を行きつ戻りつしながら疾走する感覚を楽しめた
ことは間違いないのだが、できれば次回作では、古いタイプといわれるかもしれないが、ここまで多くの要素を使わずに重要なものだけに整理し、一つの太い筋を設定し
た、求心力の強い物語を観てみたい。できれば役者陣にも、一つの人物を掘り込めるように、一人の役を当てはめてみてほしい。

http://www.geocities.jp/ktb_kikaku/topTS.html

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