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2007年7月 5日 (木)

ボイヤーチーム「ハイパープラズマ店員」 7/1

ボイヤーチーム「ハイパープラズマ店員」 7/1 

若い人のお芝居を観ていると、その言葉の使い方や小道具や小ネタの背景となっているらしい世界のことがとても新鮮に思えて、それだけでへぇーっと感動してしまうことがある。今回はコンビニのアルバイトの青年たちが地球を侵略しようとするスペースインベーダーから地球を守ろうとするという物語で、コンビニで働く現場がベースとして前提されているのが、奇妙に面白かった。
 宇宙人に拘束されている元店員AJ(「リフレイン・リフレイン」にも出ていた赤阪千明)が、複層的にスパイの役割を演じていたり、老いた元店長ジャスティス(中舘淳一郎)が謎めいた格好で謎めいた存在として現れたり、発注担当のプロと言われていて、今もその端末(ゴットというらしい)を離さないばかりか、ゴットにGPSや電話などの様々な機能を付加しているドゥビダバンク(データバンク)、棚の陳列に異能を示していた、フラフープがうまくてスリムでかわいいムギちゃん(南のうお座のフレーバー)とコンビニ店員も多士彩々だ。スペースインベーダーの面々も非常に奇抜で、一人の男爵は後述のように巨大なロボット、もう一人のノートシーゴ男爵(ブログ太久麻呂)は小猿のぬいぐるみで、黒子が操作している。彼らよりもエイリアンみたいな不気味で邪悪な存在なのが、コンビニの残飯(廃棄、というらしい)をブーメランのように投げて相手を殺す殺人鬼ダークサンタ(勇気ブレイブ)で、コンビニ店員たちを皆殺しにしたり、でもすぐに生き返るものだから、意味があるのかないのか。
 しかし、実はこの劇の眼目は、劇の外側にあったといえるかもしれない。プログラムに書かれていたように、「ケータイ使ったり、写真撮ったり、飲み食いしたり、喋ったり、」してもいいと、つまりはテレビでも見ているような感じで見てくれ、そして「スーパーB"O"Bシステム」と名づけられているのだが、QRコードを使って携帯電話でメッセージを送ると、舞台奥に投射されるというインタラクティブな(?)仕掛け。観客が芝居に「匿名でツッコミが入れられる」という画期的な仕掛けである。
 これらのおかげで、客席が緩く和んでいたことは確かだろう。さらにこの緩さを支えていたのは、段ボールでぞんざいに作られたようにしか見えない小道具であったり、意識して見せられる演技や演出のほころびであったりする。それに気づけば、観客は、鬼の首でもとったような気がして、携帯からツッコミを入れ、それが投射されて共有され、笑いを誘ったりするものだから、参加意識が高まってもいくというものだ。
 どういう経緯でか、その導線となっていたのは、スペースインベーダー側のマージャクシ男爵という、巨大かついい加減な作りで移動にも不自由を来している段ボールを紐でつないだかぶりもののロボットを演じていた出口雅敏(アホスタイル)。元は地球人だったミス・ヨーコ婦人(赤阪。このカンパニーでは脳弱モヱ子。ミスなのに婦人というのも、一つのツッコミどころなのだろう)とのやりとりの中で、「さっきから気になっていたんだが、顔はもっと上の方だ」などと、ベタでメタなコメントで笑わせたりするのが、楽しい。これは、本来なら稽古場の演出の場面で交わされる言葉だ。巨大段ボールロボットの顔は遥か上の方に(涙まで添えて)描かれているのに、ミス・ヨーコ婦人は、どうしても中に入った人間の顔が透けて見える辺りに向かって話しかけてしまう。
 これは(皮肉ではなく)非常に優れた演出である。このことに代表される、いくつもの舞台以前であるかのような言説によって、このコメディは単に笑うための劇であるにとどまらず、演劇を、笑いを成立させているものを問い崩す劇となる可能性をもったわけだから。
 マージャクシ男爵は、はなはだいい加減なお調子者で、結局は殺されてしまうのだが、その最期のシーンもドラマティックにはしない。アンチクライマックスであり続けることによって、一つの空気を作ろうとしていることが明確だ。それを大いに助けているのは、前述の「スーパーB"O"Bシステム」である。劇団のスタッフもサクラで「投稿」していたようだが、実際にぼくの周りでも何人かが送信していたし、的を射たコメントには、劇の流れとは別に笑いが起きたりもした。つまり、劇が劇の内側だけで成立しているのではなく、外側からツッコミを入れられることを容認して成立していたということだ。
 これは、随分危険なことだったことはいうまでもない。フィルターがかからないわけだから、どんな野次や否定辞が投げられるか想像もつかないし、ネタばれされるおそれだってある。つまらないコメントで白けてしまうおそれもあるし、要するに劇が壊れてしまうおそれだってないとはいえない。
 それを回避するために、おそらく脚本・演出の(主役のチースケを好演)は、わざとこの劇を緩く作ったのではなかったか。つまり、ツッコミどころを適当にちりばめておくとか、アドリブまたはアドリブのように見えるシーンを多くしておくとか、役者が素の姿を見せるような場面を作っておくとか、役者にあまり達者な演技をさせないとか。
 おそらくぼくたちは、きっちりとその罠にひっかかった。これらの計画された緩さについては、おそらくベターポーヅであるとか、ぼくのあまりよく知らない東京の若手劇団の流れに位置づけられるのかも知れないが、コンビニ店員、フリーター、ホームレス、といったリアルな空間と地球を侵略云々というバーチャルな世界の、いい加減な結び付け方が、また安易で、なかなか面白かった。

http://boiya-team.com


Hello Kitty × SPACE INVADERSハローキティ×スペースインベーダーフェイスタオル

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