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2008年5月15日 (木)

「ダンスの時間」19 垣尾優

(4) 垣尾優ほか「人間は、手をあげ、ふりおろし、そして、ゆれる」
 おそらく今回「ダンスの時間」の最大の話題作、問題作(!)。コンセプトは、「舞台上で机を作る」。塚原悠也がガラクタのような様々な音源を持ち込み、hitori工務店の白藤垂人が舞台奥の入口から材木を運び込み、映像の三ケ尻敬悟がビデオカメラとプロジェクタを抱えてそれらを撮影し映写し動き回る。白藤は角材を適当な大きさに切り、枠をかませてつなぎ、脚をつけ、電気鋸を巧みに操って丸いちゃぶ台に仕上げ、ニスを塗る。出来上がったところでそのちゃぶ台を囲み、全員でビールで乾杯! 垣尾はその間で、他の3人にちょっかいを出したり、材木の切れ端で積み木をしたり、しかし基本的にはスペースを無理に見つけたりして「踊っている」。
 さて、垣尾が踊っていると思われるのは、もちろんダンスの公演に提出された「作品」である以上、何かダンスの要素があるはずだと観客は探すわけだが、彼が積み木をしているのでもなければ、机を作る手伝いをしているからでもないからだろう。この舞台の中には、奇妙なグラデーションがあった。白藤は机を作る。塚原は音を出す。三ケ尻はビデオで記録する。垣尾は踊る。白藤の行為は、この社会の中で明確な産出行為であるが、他の3人のいわゆる芸術的創造は、そうではない。P1010180
 しかし、そういうこと(芸術行為の無目的性だとか、非生産性だとか)がこの作品にとって重要なのではない。何かもっと、それそのものへと向かう言葉というものはないか。……
 舞台上を乱雑にしているのは、塚原のガラクタのような音源やモニターと、白藤の工事現場そのもののような角材や道具たちだ。電気鋸からは木屑がもうもうと立ちのぼる。おそらく劇場がスモーク以外のものでこんなに煙ることはないだろう。彼らは、何をしたかったのだろう?
 だって、机を作りたかった、なんてわけはないじゃないか! もし垣尾のダンスを中心に置いてこの出来事を考えるとすれば、彼が自分の踊る環境としてこのような場を構築したということだ。しかし、この、あえてこの日はcontact Gonzoと名乗りはしなかったが、それ+1であった彼らの運動体としての考え方を思えば、ダンスが突出して頂点に立っていたと考えることは、決して適当ではないだろう。
 三ケ尻の映像という存在は、鋭く自己言及的なものだった。自分たちの行為を撮影して映写するという行為を観客に見せるという、何重にも顕示的な存在であり続ける。塚原の音楽も、自らの声や他の出演者が出す音を入力、加工して出力し、それ以上にその作業を舞台の上で見せている。一見、合目的的なような白藤の「机を作る」という作業も、本当は必要のない作業だ。その机は誰に発注されたわけでもなく、引き取り手は決まっていないし、販売されるわけでもない。白藤にわずかばかりのギャラが分配されたとして、それは机を作ったという作業の工賃ではない。
 ダンスは、どうだ? このにぎやかな舞台の中で、うっかりすると見逃しそうになる垣尾の動きは、しかし実のところ非常に洗練されたもので、レティシア・セキトなどは、「彼はフォーサイスのところのダンサーか?」と真顔で尋ねていたほどだったのだ(笑)。再びしかし、その洗練はこの「作品」にとってどんな意味を持っていたのか? 
 意味ではなかったのだ。意味はと問われれば、その問い自体の意味のなさを問い返すしかないように組み上げられた「作品」である。しかし、これを観た人には、強い印象が残る。戸惑いだったり、驚きだったり、感嘆だったり、感心だったり…。30分というこの時間の持つ強さ自体がこの「作品」の魅力であったことは間違いないだろう。そこには、メンバーが等価に感嘆されるだけの力を持っていたわけだ。
P1010205  四角く組まれた机が白藤の電動鋸で円形に削られ、それを無造作に客席に見せたときの「ほうっ」という感嘆の声。その瞬間が、この作品を最もよく物語っていたように思う。
 なお、夜公演では、この前に上演されたレティシア・セキト作品の残したスパンコールを撤去するスタッフと出演者が入り混じるような格好に成り、それもまたいい効果を生み出した。
 実は、上演時間が40分ぐらいになるという話もあったのだが、無理を言って30分に縮めてもらった。「ダンスの時間」の形態では、精一杯のこととはいえ、ご容赦いただきたい。また、こんな場で何だが、このような状態になる作品の上演を許容してくれた劇場、スタッフの皆さんに、深く感謝したい。きっとこの初演は、歴史に残るから。

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