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2009年1月18日 (日)

【既発表】白井剛「ノクタルーカと灯虫の冒険」

(京都新聞2008年7月22日掲載。タイトルは編集部による)

【映画との対照、手際鮮やか】

 ユニークな企画で多くのファンに愛されている老舗映画館・京都みなみ会館が、七月五・六日、コンテンポラリーダンスの白井剛のパフォーマンスの場となった。

 一昨年のトヨタコレオグラフィーアワードの受賞者である白井は、ダンスそのものよりも、自作の映像などの様々な切り口によって映画館で踊ることの意味を考え、全体としての物語や価値を分析し提示することに重点を置いたようだった。

 公演を映画の予告編から始めることで、映画のようにダンス公演を行うのだということを、明確にした。予告編が終わると、白井の映像が始まった。最近ギターを買ったことが身辺雑記のように語られ、昆虫図鑑からオオヤママユのような蛾が映し出された。それらがどう結びつくのかなどと思っていると、ギターのフレットを押さえる指をクローズアップして反転し、並べると、ロールシャッハテストの画像のように、つまりは蝶か蛾のように妖しくうごめくものとなったのだ。

 予告編の途中から白井は、通路を踊るように進んだり、スクリーン手前の狭い壇上でキャンドルに火をつけたりと、地味な動きを見せていた。映写機からの光だけなので、身体が輝くわけではない。しかも通路での動きは、非常に見えにくい。暗さの中でがさごそとうごめく身体は、映画館に侵入した一個の生き物、むしろ邪魔者のようでさえあった。タイトルの「ノクタルーカ」は夜光虫、「灯虫」は「ひむし」と読み、灯りに群がり身を焦がす虫のこと。まさに銀幕に吸い寄せられた一匹の虫に、自らを擬したわけだ。

 場内が明るくなって、カーテンコールや拍手もなく、映画のように公演が終わった。終わってみれば、映画上映のようなダンスの公演というよりは、映画館という機能を取材し、映画というスタイルを周到に分析して、ダンスと重ね合わせる試みのようだった。ここに身体の強い表現を求めた観客は肩透かしを食らっただろうが、たとえば一秒間に12コマという映画の明滅と、白井のコマ送りのような人形振りの動きとの対照など、解釈・分析の手際は鮮やかなものだったといえよう。

 しかしやはり、ダンスは、身体は、知的な操作によって理解されてしまうものであってほしくはなく、これらの作業によってさえも滓か澱のように残ってしまうものを、灯虫ではないが、身を焦がすほどの強さを見たかった。

■学研 大人の科学 8ミリ映写機 ¥7980

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