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2009年3月22日 (日)

彗星マジック「朔」----うーちゃんとくまさんのお芝居談義

■彗星マジック「朔」

う 筋を説明するのは、すごく苦手なんだけど、まず、イラクやアフガニスタンを思わせるような、公式には「戦後」なんだけどまだまだ内戦状況が続いている、という設定。一枚の写真に写っていたアコーディオンを弾いている二人の女性の運命とか、反政府側の策謀や葛藤とか、人間を科学の力で操ろうとする博士の真実やいかに?とか、音楽や娯楽の力とか、いろんな要素を、ボランティアで現地に入った二人の日本人の視点を中心に、複雑に入り組ませて感動的な作品になったのが、彗星マジックの「朔」(作・演出=勝山修平。3月1日、ウイングフィールド、大阪)。

く ややこしそうだね。

う でも、一枚の写真から始まって、ゲリラに捕まって危機一髪になって、そこから逃げて、迷い込んだ建物で出会う人たち…というように、序盤から展開がぐいぐいとスピーディで、案外混乱はなかったね。

く スピード感があったんだ。

う うん。男優たちの走る姿とかもカッコよかったし、展開にもたもたしたところがなかった。若い役者さんたちがすごく魅力的で、勢いのある作品だったと思うよ。朔(小永井コーキ)というのは、日本人ボランティアでカメラマンの名前。その友人ツゴモリ(寺尾有司。フリー)は理論派で行動も俊敏で判断も迅速で、すごいシャープな男なんだけど、朔はいつもおどおどしてて、もう日本に帰りたいって弱音を吐いてる。役割としては、朔はカメラマンだということからもわかるように「見る人」、ツゴモリは「動く人」かな。でもツゴモリは、自分の達成感のようなものばかり求めていて、現地の人たちに沿っていくような心は薄いように見えていたんだけど、街で足を離すと炸裂するタイプの地雷を踏んでしまったフート(太田真紀。フリー)を助けるために、彼女の靴の下に自分の手を入れて救うという場面で、彼の命を賭けた強い自己犠牲的な行動に、泣きそうになっちゃった。

く それはいわゆるステレオタイプな劇的エピソードではないの?

う うん、それだけ取り出して紹介するとそう聞こえるかもしれないけど、そうなるまでのいきさつからいって、決して取って付けたような強引なものではなかったし、そこまでに作られていた彼の人物像からその行動がちょっと意外だったということ、その意外性が実は深く納得できるようなものだったこともあって、違和感にはならなかったね。寺尾さんの表情がシャープで、演技も前のめりな感じで、よかったし。

く 何か大きなものは伝わってきた?

う 難しいんだけどね、きっと、極限的な状況の中で、いろんな人がいろいろな形で誠実に生きようとする姿といいうのが一つね。それから、その状況を打破しようとして、つまり平和を自分で創ろうとして、しばしば人は大変な間違いを犯してしまう、ということ。それがとても悲しく、というのは悲劇的にも、悲惨にも、丁寧に描かれていたように思う。

く 具体的には?

う たとえば、ミト(成瀬トモヒロ。劇団kuskus)は、今は小グループのリーダー格で、皆をまとめる温和な人なんだけど、だんだん裏があるように見えてくる。実は、生体実験によって人間の性質を平和を愛好するように変えて、それで戦争をなくそうとしていたの。その実験のために、昔、井戸に薬を入れて反政府グループを大量に殺したり、その現場を爆破したりしていた。そしてその実験にも失敗している…。

く ひどいね。でも、平和のために戦争を、とか言う人は多いもんね。

う その冷徹さとやさしさと純粋さを、成瀬さんは、絶妙に演じ分けてたと思うよ。憎たらしいぐらいだった。それからアコーディオン弾きの二人の女性、ウシオ(西出奈々)とヤコ(木下朋子)。おかしいのが、お互いに「お姉さん」と呼び合っていること。
く 双子でも、そうはならないよね…

う うん。関係性の言葉だもんね。正直言って、ちゃんとはつかめてないんだけど、どうも反政府グループが爆破されたときに招かれていた音楽家姉妹なの。ところが実は、ヤコのほうは、事件直前に知り合った瓜二つの別人だったらしいんだけどね、どういうわけか、というのはいくらでも理由は考えられるけど決定的ではないのは、つまり人間が一変してしまう理由なんて一つだけとは限れないということだと思うけど、とにかく、瓜二つの別人なのに、そうなってしまっているようなのね。そのこと自体、つまりヤコが以前のヤコではないことは、本人にも「お姉さん」にも封じ込められてしまっているらしい。つまり、ヤコは別人として生きているわけだし、姉のウシオは妹を失ったことは本当はわかっているのに、そして今目の前にいるのは別人だと知っているのに、以前と変わらないふりをしている。ものすごく大きな悲惨な事件の真ん中にいて、そうすることで二人ともかろうじて自分を保ってるんじゃないのかな。

く 大きな劇なんだね。それにしても、プログラムに配役が書かれてないのが残念だね。レビューしにくいし、客演の俳優さんなんかに、ここで目を留めて観に行くということがしにくいのは気の毒。何か必要があってのことなのかな。うーちゃんは、木下さんがお気に入りなんでしょ。

う えっ、あの、ま、たしかに、かわいいというか、声がいいし、無垢というか透明というか、そういうものが目に見えるとしたらこうかな、って…えーっと、はい、配役については、念のため、メールで西出さんに教えてもらったんだ。ありがとうございました。

彗星マジック=http://www.rinku.zaq.ne.jp/suiseimagic/toppage.htm

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