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2011年3月31日 (木)

うーちゃんとくまさんのダンス談義 2009年秋~冬

う 「dance+」でずいぶん間があいちゃったので、2009年の後半のことをお話ししてなかったんだよね。さかのぼっちゃうけど、ちゃんと公演のレビューをしておきましょう!
く はい。
う すごい素直ですね。気持ち悪い…。
く いやいや、やっぱり一つひとつの公演評が基本だから。その集積が、一つのまとまったものとなるかどうかは、わからないけどね。個々の公演についてたくさん考え書いていくことが、一つの積み重ねとなって、何らかの達成感になるような予感は、多くの人がないんじゃないかな。
う それが現代、現在、ってことなのかなぁ? じゃあともかく、2009年の秋ごろから、だだぁーっといっちゃいましょうか。
く 大変だ。

う では、まず平山素子さんの『Life Casting-型取られる生命』(11月14日、兵庫県立芸術文化センター阪急中ホール、西宮)。平山さんのソロ作品『Twin Rain』は、まず彼女の身体をかたどったオブジェ、それと同じ材質かな、壁のような舞台美術(渡邊晃一)が印象的。

く 型取りのオブジェ、「ダナエ」っていう名前の機械で作るんだってね。だから、型取りというのは、方法や過程であって、目的としては静止、停止、凍結の状態を作ることなんじゃないかと。つまり、人形のようなオブジェは、登場する人間から外化された分身というよりは、その人間の過去の静止した状態であって、異なる時間が共存というか、侵蝕しあっていることになる。もっと言えば、その境界のようなものとして、壁が存在するのかもしれない。
う 作品時間の始まりは、そのオブジェに平山さんが覆いかぶさるようにして長く静止している状態だった。だから、それが始まりなのか、終わりなのかも、ちょっと考えさせるね。チャイムやオルガンのような音が入って、掌を開花させるようにゆっくり動き始めるんだけど、なんだか、花開くというよりも、萎れていくようにも見えちゃった…。

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く 面白いね。オブジェと実在の身体の、どちらに生命があるのか、与えられるのか、わからない状態に見えたわけね。単に型取りを出すことで、存在を二重化するというだけでは、そんなにユニークなことではなかったかもしれないけど、そのどちらが実在かということに時間性を二重化しながら、二つの間を自由に往来できるように見えたから、作品の幅がぐっと大きくなったんだろうね。違う言い方をすれば、人間が、というかダンサーという存在が、生に向かっているのか死に向かっているのか、どのようにも見えたということかもしれない。
う 構成としては、シンプルだったといえるんだろうね。壁、その向こう側、壁を破って出てくる、という段階を追って見ることで、時間の流れや空間というか存在の相の変移のようなものが見えたような気がした。
く だいたいは、構成はシンプルで、動きの表情やボキャブラリーが豊富なほうが、面白いよね。 

う 11月17日に観た維新派『ろじ式』(精華小劇場、大阪)も、すごかったよね。精華小劇場という空間が、あそこまで変わってしまうのか、維新派の世界になってしまうのか、という驚きがあった。演劇の大道具の立て込みとはまた違った、執拗なぐらいの奥行きがあったね。
く 特に今回思ったのは、舞台を一つの大きな景色として、ワンショットごとに完璧な絵みたいに構成していって、それをパラパラ漫画みたいにつなげていくというような、強い意志のある構成力。景色って、よく陶器の名品とかで言うじゃない、ああいう、文字通りの小宇宙としての形式のよさ。室内での作品ということもあっただろうけどね。すべてのシーンが、構図や組立てとしても、美意識の表われとしても、一分の隙なく、息つく暇もない。
う 舞台が近い分、一人ひとりの演者の顔、表情、存在感がつぶさに見れたのも、面白かった。魅力的な人が多かったね。
く 一つひとつのショットに、最大限の叙情をこめていくように作られているんだろうね。そのための演者だと思えば、彼ら/彼女らは、非常にふさわしいんだよ。物語を進めていくための言葉や身ぶりを与えられているよりも、その場景にどれだけの情緒をこめうるかということで、ぎりぎりまで追い込んでいるんじゃないかと思った。
う そういう空間になることができた「精華小劇場」という存在が、それからたった1年半でなくなってしまうというのは、本当に残念だな。
く うん。元々小学校だったという、たくさんの思いの詰まった空間だったからこそ、そういう変容もできたんだろうね。

う 神戸ビエンナーレ2009では、兵庫県立美術館と主会場メリケンパークの間を往復する<海上アート鑑賞船「ファンタジー号」>の中で、ダンサーによる即興パフォーマンスがありました。私たちが乗ったのは11月19日で、会期も最終盤、きたまりさん、佐藤健大郎さん、鎌田牧子さんが乗ってました。お客さんが、下船の時に一緒に写真撮ったり、わりと喜んでらっしゃるようでしたね。ダンス船と銘打っていたわけでもないし、何かパフォーマンスがあることが期待されていたわけでもなく、一応海上に設置された3つの美術作品を船から観るということで、芸術に関係がないわけではなかったんだけど。
く 鎌田さんの、波に揺られるようなゆっくりと緩やかな動きは、実際の船のスピード以上にゆったりとしたもので、面白かった。佐藤さんの船長姿での方向指示か安全確認みたいな身ぶり、ホントに船員さんだと思った人も多かったんじゃないかな。中では、きたさんが激しかったかな。
う 海上の美術作品の小ささには驚いたよね。実際は数mあるんだろうし、もし画廊とかの中で見たら巨大なんだろうけど、海の広さ、山の大きさ、ブイや防波堤の大きさに比べたら、驚くほど小さくて、気の毒に思えたほど。
く そんな中で、異物のように混入した身体、って感じがよかったんじゃないかな。あえて、働きかけたりしなかったのが、ちょうどいい距離のとり方のように思えた。できれば次回は、こういうゲリラ的な企画じゃなくて、独立した企画としてダンスの公演を実現してほしいね。
う 神戸ビエンナーレの、ひいてはこの世の中で、ダンスというものがどういうふうに捉えられてるかっていうことで、今の時点では、大道芸のほうが重視されてたって感じだったもんね。
く うん、社会的には、コンテンポラリーダンスというものは、そういうものかもしれない。でも、美的にとか、芸術的にとか、そういう尺度で語られているわけではないので、それをごっちゃにしてはいけないよ。ビエンナーレといっても、運営面においては、必ずしも芸術的尺度で測られているわけではないんじゃないかな。そこのところをきちんと整理して考えないと、イベントとしてのあり方と、芸術としての個々の作品なり個人の「価値」(という言葉も微妙だけど)がごっちゃになって、芸術を他の尺度で測るような愚を犯してしまうことになるから。

う その次の日に、伊丹のアイホールで観たチェルフィッチュ『クーラー』TEUTO『ソーグー』は、いろんなことを考えさせられたね。これをアイホールが「アイホールダンスコレクション」として選んだということが、まずなかなか刺激的。
く まずチェルフィッチュだけど、テキストと演出は岡田利規さんで、初演は2004年に京都のArt Complex1928に行われたものです。この作品は、翌年、TOYOTA CHOREOGRAPHY AWARD 2005のファイナルにノミネートされたことで、話題にもなりました。もうぼくたちは、チェルフィッチュが「ダンス的」だとして評価されていることも知っているし、関西でも結構多くの作品が上演されて、チェルフィッチュ的なるものについても知っているわけだけど、それをまたあえて「ダンスである」として提示されると、かえってどこを何をどう見ていいのかわからなくなるね。
う それは、セリフというか言葉が、変形された演劇のようにのべつ幕なしに出されているからかな。
く マグリットではないけど、「これはダンスではない」「これは演劇ではない」というような面白さというか、難しさというか、そういうものを抱えた作品を、「ダンスコレクション」として出されると、入り口で立ち止まってしまう。枠というものをこしらえてしまうことのおそろしさ、ということかな。初めて見た時のような驚きは、失われてしまうしね。
う うーん、それを失われちゃうって言っちゃっていいのかな。
く これを演劇として、その物語や非-物語性を受け取るなら、違う楽しみ方があったかもしれないけど、実のところ、物語としては、オフィスのクーラーの温度調節をめぐって、男女間の、巧妙に隠蔽してぎりぎりセーフを狙っていながらも本質的には全然アウトなマッチョな差別意識に、全然楽しめなかったというのが本音。で、身体表現として見ようとすると、やたらとタバコを落とすのが気になるぐらいで、喋りながらセリフと関連のない動きを続けている、ということだけが残るのでは、楽しみにくかったね。
う 今はまた新しい世界に突入してるらしいよ。見たいね。

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う もう一つの「ソーグー」は、作=吉澤祐太、振付=芦谷康介、振付・演出・美術=杉原邦生で、2006年にアイホールで初演された「自転車ダンス」。太田省吾さんから「再演するべき」と強く推されたという、鳴り物入りの再演です。
く 二つの問題があって、一つは、出演者が最初から最後まで全員自転車に乗っているから、身体の動きが極度に制限されて、つまり身体そのものの動きであるよりもパフォーマーのフォーメーションを見ることに、喜びが限定されること。もう一つは、これを言っちゃ、芸術なんて終わっちゃうんだけど、それに神戸ビエンナーレのアート鑑賞船にも通じるんだけど、舞台の奥の壁を開放して公道が見えた時に、公道を往来する歩行者や自転車、ベビーカーのほうが、よほどリアルなこと。
う そりゃ、リアルには違いないよね。リアルそのものなんだから。
く そのことをこんなに露わにしてしまったという意味では、ものすごい作品だったと思うけど…身体のことに戻るとね、可能性としては、個々のパフォーマーの身体性や身体技術なんてどうであろうが、自転車というスピード感と、何よりもフォーメーションの面白ささえあれば、舞台作品は成立したはずかも、というテーゼではありえたかもしれない。
う それじゃ、マスゲームみたいなものじゃない? それに、自転車がぶつかったりっていうことそのものが、なんだか物語っぽく見えちゃって、コントか単純なマイムみたいにも思えちゃって。
く もっと激しいものを予想してなかった?
う でも、サーカスじゃないんだから、曲乗りとかは、なくて当然だよね。
く そうなんだけどね。繰り返しになるけど、自転車に乗っちゃってるものだから、腰はサドルの上にロックされてるわけだし、足はペダルを漕がなきゃいけないし、手はハンドルを持ってなきゃいけないでしょ。そうである限り、ダンスとして、身体表現としては、あまりに運動の可能性が狭まっているわけで、そうならスピードないしフォーメーションを極端化して見せていくか、自転車に乗るという行為から逸脱していくかしか、道はなかったんじゃないかな。

う そういう仕掛けという意味では、角正之さんを中心にした『ECNAD LLUN イクナッド・ルーン~このカラダだれのもの?』(11月23日、ジーベックホール、神戸ポートアイランド)も、いろいろと考えさせられました。 
く ダンサーも角さんのほか中田一史、森美香代、名古屋の倉知可英と豪華なメンバーだったし、インスタレーションもなかなか面白かったと思うんだけど、映像があまり面白くなかったのが残念。わりと具体的なものが出てくる映像で、意味が限定されたのは、惜しかったね。 

う 神戸大学の『場との交流』(12月19日、神戸大学百年記念館)は、ボヴェ太郎さんの野外パフォーマンスと、ボヴェさんに富田さんと上念さんを交えたディスカッション。この企画は、大学院生の研究内容を広く知ってもらおうということが主な目的で、富田さんのコンテンポラリーダンス研究の成果発表が一つの中心だったんだけど、ボヴェさんの、建物の構造を活かして絶景をバックにしたコンパクトなパフォーマンスがすごく魅力的で、その身体を中心にディスカッションが行われました。
く ものすごく簡単に言って、ボヴェさんのすごいのは、ごく単純な動線を、とてもゆっくりと長い時間をかけてたどって、それでいて誰も飽きさせないところ。そういうと、風景のように思われるかもしれないし、確かにそういう部分もあるだろうけど、そこに求心する点として確かに存在しているのがすごいよね。

う シルヴィ・ギエムアクラム・カーン『聖なる怪物たち』(12月21日、梅田芸術劇場、大阪)は、音楽がライブ演奏で、言葉もたくさん使った、不思議な公演。再演ものだし、DVDだって出てるぐらいで、いまさら取り上げる必要もないようなものだけど。
く まあね。バレエダンサーのギエムと、カタックというインドの伝統舞踊にベースがあるコンテンポラリーダンサー、カーンのデュエット作品だけど、まずは言葉によって、つまり二人のダンサーが喋ることで、個々のダンサーのこれまでの道のりが具体的に鮮やかに語られるのが、記憶に残ってしまう。

う うん、ギエムってこういうことがあったのかとか、二人の会話の雰囲気とかが、すごくよくわかって、楽しくはあったけど。
く アクラム・カーンの作品は、他にもDVDで見たことがあるけど、やっぱり言葉が奔流のように語られて、それと動きとの関係が見どころなんだろうけど、なかなかその関係自体を楽しむというのは難しいように思えたね。
う 今、言葉を使うダンス作品が増えてるけど、そういう流れの上にある作品なのかな。
く そうだろうね。ナラティヴということを意識したり、ダンス作品の人称の問題とかをはらみながら、「わかりやすさ」とか、ダンサーのスター性にも頼っている部分はあるでしょう。

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