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2015年3月28日 (土)

「ダンス甲東園2014 Gava」

2月14日
西宮市立甲東ホール(甲東園)

構成・振付:高野裕子
出演:新井るか、斉藤綾子、鈴木みかこ、高野裕子  井上繭加、加藤梓、川原美夢、久々成秀司、阪口沙輝子、嶋岡菜緒、鈴木亜由子、鈴木響心、
玉邑浩二、近松路子、ドイミナ、HISA、菱川裕子、藤井琴野、湯澤紗生

Gava


 前回のダンス甲東園で小品や中篇作品を発表して好評だった高野裕子が、年齢・性別を問わず出演ダンサーを公募し、19人でワークショップを重ねて実施した公演。当初は9名程度の予定だったそうだが、5歳から55歳までの19名、そのうちダンス経験者は半分ぐらいだろうか、そうなったことで、この日の舞台への方向性、空気はほぼ決まったのではなかったか。高野はそれを「初めましてのその日から、心踊らされることがある。その人たちのことをもっと知りたいと思ううちに、一緒に手をつないで踊り、それがいつしか振り付けになり、文章になり、写真になり、音楽になり、言葉になり、作品になりました」と書いていて、まさにその通りだったろうと思われる、まずは自然な楽しい公演となった。

 コミュニティダンスと呼ばれるものがある。「地方」の公共施設が主にコンテンポラリー系のダンサーを招いて、地域の人々を集めて未経験者対象のワークショップを開催し、最後にショーイングを行なうという一連の事業であるとされることが多い。健康志向と芸術志向を共に満足させるダンスで、初心者向けとなれば、けっこう希望者も多い。しかも既存のテクニックをなぞるのではない自由な発想や動きが歓迎されるコンテンポラリーダンスでは、他者との言語的ではないコミュニケーションの面白さ、自由に即興的に身体を動かすことの喜び、そのことによる自己発見等々、様々な収穫が得られる。公共施設の利用率が上がり、自主事業としての実績ともなり…といいことづくめのことだと思われる。

 そこで本来の「コミュニティ」への問いかけはどこに行ったのか、どこかのコミュニティでやるからコミュニティダンスだなんていうことはないだろうし、集まってきた人が何回かのワークショップで仲良くなったからそれがコミュニティ形成だというのでもないだろう、と思い、コミュニティダンスの行く末について、実は危惧している。
 一方、実際のところは、それでいいのだとも思っている。本来はとか、そもそもという送り手側の意図などそっちのけで、現場ではたいてい感動的なシーンが完結しているし、ダンサーや個々の参加者にはいい経験となっているようだし。
 
 この公演は、ダンス経験者はそれほど多くはないが、高野より年齢も経験もおそらく知識の蓄積も芸術的な素養も豊かだったり対等だったりするメンバーが多かったと言っていいだろう。そのような多様なメンバーで作り上げられた作品は、やはりワークショップ作品らしくゲーム性や遊戯性に満ちており、全体に作り物ではない幸福感に満ちて、それが客席にまで伝播してきたことが、この公演の最大の美点であったように思う。
 今回の公演の実施に当たって、高野が信頼できる同世代の3人のダンサー(新井るか、斉藤綾子、鈴木みかこ)をあらかじめ別格的なメンバーとして決めていたことが、パフォーマンスのレベルを保証した以上に、大きな役割を果たしたと思われた。この4人のコミュニケーションの柔らかな輪が、内向する閉鎖的なものではなく、外に広がり、外を巻き込むものであったこと、他の参加者が内部での交友関係形成の核になることを許容したこと、つまり高野が、中心になるのではなく、ゆるやかな枠組みになることで、このダンサー集団のコミュニティ生成力が非常に大きなものとなった。

 見方を変えれば、ダンスをしよう、あるいは何かをしよう=それがダンス、という人が集まって、集まってみたら個々がとても魅力的で、それぞれが流動的な中心となって緩やかなコミュニティを再形成するコミュニティになりえたことで、本番においても、観客を巻き込んで新たなコミュニティを生成することができたのではなかったか。

 コミュニティダンスのありうべき姿の一つに、コミュニティとまで大げさに言わないまでも、参加者の関係性を生成する能力を高めること、関係性を深める場をつくること、があると思う。その意味で、この公演は成功していたと思うし、主催者が今後の継続を示唆していたのも、うなずける。

 作品として見た時には、ないものねだりではあるだろうが、その関係性を開放的に提示する場面がほとんどで、もう一面他の方向性での場面を見たかった。また、踊れる人が複数いたので、踊りまくるシーンが見たかったような、いやあまりとってつけたようなことはすべきでないからよかったような。多世代を対象としたワークショップを経たショーイングというのは、どうしてもコンセプトが幼児化する傾向になるのかなとも思わされた。

 何気なくニコニコしているうちに終わっているように見えて、フォーメーションはきっちりとしていたし、箱馬や紐といった小道具の使い方も明快だった。音楽や衣裳の使い方、物語的な要素の挿入も的確で、要するにかなり計算された完璧志向の作品だということが、よくわかった。子供も参加していたので、アクシデントの発生を容認しながら、それでも完成形を描けるというのは、たいしたものだ。

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