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2015年3月28日 (土)

「はじめての日本舞踊」

7日 
兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホール

出演:五耀會(西川箕乃助、花柳寿楽、花柳基、藤間蘭黄、山村友五郎)

 日本舞踊界の脂の乗った中堅どころが流派を超えて結成した五耀會が、昨年の第1回公演に続き、初心者を対象として開催した第2回公演。今回は山村若が友五郎を襲名したこともあり、友五郎以外の4人で義太夫「寿式三番叟」、友五郎の地歌 「神楽初」、後半は「セビリャの理髪師」 の筋書きをもとに蘭黄が作った創作長唄 「徒用心」という、サービス満点の公演。

 ここ数年、文化庁芸術祭の仕事を拝命しているので、門外漢だと言い訳をしながらも毎秋数本の日本舞踊の公演を見せてもらう。それの役に立つかと思って、NHKの「にっぽんの芸能」なども見て、日本舞踊の現在のレベルを一応把握しておこうと努めてはいる。華やかかどうかということは感じ取れるし、巧拙も玄人の見方はわからないとはいえ、ピンとしてるとか、滑らかだとかいうようなことぐらいはわかるように思っている。率直に言うと、同じ演目をやっても、歌舞伎役者と日本舞踊のお師匠さんでは向きが違っているように思う。日本舞踊においては、まず流派の流儀義、型の伝承ということが主眼となるようで、歌舞伎役者においては、自分の持ち味によって観客に見せることが眼目となるだろう。ざっくばらんに言えば、お客さんに向かって開いているか、そうでないかということ。

 その意味で、「鑑賞対象としての「日本舞踊」」を強調する五耀會は、日本舞踊を初心者、一般の人が鑑賞することを前提とした公演を行なっている数少ない舞踊家たちの集まりだ。

 桂吉坊をナビゲーターに置いたり、山村友五郎が「神楽初」の前に幕前で作品について語ったりしたのはその試みの表れだし、何より「徒用心」という作品が、面白くてわかりやすく、一般の人にも理解しやすく楽しめることを目指して創られたものと言えるだろう。

Adayojin


 「徒用心」は、若い二人の恋路を邪魔する男の策略を軽い機転でかわすコミカルな部分で笑いを誘うのはもちろんだが、場面のメインの出演者以外の舞踊家が、背景や大道具の役割で枝になったり鳥になったりするのがユニークで面白く、またその所作のいちいちの美しさに改めて目を瞠った。原作の設定の置き換え、詞章の滑らかさ、キャラクター設定の巧みさなど、蘭黄自身がパンフレットに「洗練された馬鹿馬鹿しさ」と書いているように、コミカルで他愛もない筋書きを、日本舞踊の洗練された美しさで演じ踊り通すことの真剣な姿が、なおのこと美しく感じられた。特にトリックスター的な理髪師フィガロを髪結彦郎として演じた、花柳基の軽みのある達者な居ずまいがすばらしいと思えた。

 一般の人に広く親しんでもらおうとする時に、どうしても喜劇性を強調し、そのおかしさが舞台の上でのノリもあって増幅され、上品さから逸脱するかのぎりぎりで留まる呼吸がきわどくスリリングだ。このおかしさから、前半の三番叟や地歌をきっちりと楽しめるようになる通路を拓くことが、観客に求められているのだろうと思う。それができないことには、日本舞踊は内向きで完結する同好の士の集まりを出ず、衰退の一途を早めるばかりということになってしまう。コンテンポラリーダンスにとっても他人事ではないが。

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