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2015年5月 9日 (土)

宝塚歌劇団花組「カリスタの海に抱かれて」「宝塚ファンタジア」

3月26日

「カリスタの海に抱かれて」 作:大石静、演出:石田昌也
「宝塚ファンタジア」 作・演出:稲葉太地
 主演:明日海りお、花乃まりあ

宝塚大劇場(宝塚市)

Calista


 娘役トップスターで研5(入団5年目)の花乃まりあ(かの・まりあ)が、宙組から組替えして大劇場主演お披露目ということで、様々に注目される公演であった。宝塚ファンは、往々にして娘役には冷淡なものだが、花乃が宙組時代には『the WILD Meets the WILD』(2013年7-8月)をはじめ、男勝りの勝気な役の印象が強く、トップ娘役らしい上品さ、優雅さが表わせるのか、また宝塚きっての美貌の男役トップスター・明日海りお(あすみ・りお)に並ぶに相応しいかどうかという率直な疑問の声もあり、もしかしたら他の娘役に対してよりも、冷淡さの度合いがきつかったかもしれない。

 それでも、この公演でのアリシアという役は、野性味のあふれるタイプだったので、従来の路線のままで無理なくこなせたようだった。ただ、ショーも含めた印象だが、フワーッとした浮遊感、上昇感、無重量化感に乏しい。演技や歌のうまい娘役など、いくらでもいるが、そういう天上感がない場合に、どのような色を打ち出すのか、工夫が必要だ。立ち姿での重心の置き方、顔の位置でかなり印象が変わって来るものと思うが、今後明日海が演技や存在感の幅をどんどん広げてくると思うので、相当な努力が必要になるだろう。

 明日海が演じた主役のシャルルは、屈折した少年~青年時代を経て、フランス革命の混乱に乗じて故郷のカリスタ島を独立させるべく、故郷に赴任を志願した司令官。二番手の芹香斗亜(せりか・とあ。写真)演じるロベルトは、フランス軍に父親を殺害された、島の青年のリーダー。アリシアは幼い頃からロベルトの許婚だが、返事を延ばし延ばしにしているうちに、やってきたシャルルに心奪われてしまう。シャルルも事情を知らずアリシアに恋心をいだくが、ロベルトのアリシアへの思いを聞いて、ロベルトを裏切ることはできないと、恋心を断ってしまう。

 その後の展開は、特にロベルトに飛躍があって付いていきにくいが、シャルルとアリシアは結ばれてアメリカかどこか新天地へ向かうらしい。一方のロベルトは、独立は成ったものの、長年愛し続けてきたアリシアに去られた傷心を抱え、カリスタのために命を賭ける、もう友も愛も信じない、と悲壮な決意をする。このラストのロベルトについては、希望に満ちた決意を抱いたふうな、前向きの姿に描けなかったものかとは思う。

 ロベルトの芹香はまだ研8ながら、ここのところ急速に男らしさが増し、演技にも太さや深みが出てきた。この時期にこの役に当たったのは相応しく、本人の成長のためにもよかったと言えるだろう。やや弱かった歌にも長足の進歩が見られ、研12のトップ明日海とフレッシュでバランスのいいコンビとして安定してきた。

 劇全体を思い返すと、特にロベルトの今後を思って暗い気分になるのだが、舞台を見終わった時点では、実にさわやかなハッピーエンドであった幸福感に満ちていたのが、面白い。それは主には明日海のもつ天性の華やかな爽やかさによるものだろう。

 シャルルの陽に対する陰の役割を、ロベルトと共に分け持ったのが、アリシアの兄のセルジオで、研11の瀬戸かずやが演じた。端正で品のある容姿に恵まれる一方で、時に暗い情熱を秘めた屈折を表わす演技力があり、舞台に重みを加える存在になってきている。

 ナポレオンを演じた柚香は、大胆にコミカルなタッチを加え、意外な側面を見せた。シャルルの副官、研9の鳳月杏(ほうづき・あん)がシャープでクールな容姿と抑え気味の演技の中に光るセンスの良さ、立ち姿の美しさで、目を引いた。

 ショーの『宝塚幻想曲』については、三味線や和太鼓を使った和洋折衷に違和感があり、入り込みにくかったが、おそらくこれは個人的な好悪。このショーは台湾公演に持っていくということだが、海外公演で初めて日本物のショーがないので、洋物でありながら和のテイストを加えるということで、こういう編成になったのだろう。

 和太鼓の厚いビートに乗ったスピーディで激しいダンス、バスケットボールの若々しいシーン、明日海の花魁姿からの超早替りなど見どころが多い。総踊りに近い群舞が「花は咲く」をバックにしていたのは、東日本大震災時の台湾の人々の熱い支援への感謝の念を表わすという意味もあるようで、テンポの速いショーのなかにしっくりと違和感なく溶け込んでいた。研14で退団する華耀きらり(かよう・きらり)の場面も行き届いていて、容姿にも才能にも恵まれながら、要所でケガに泣いた魅力的な娘役のラストステージを飾った。

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