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2015年7月13日 (月)

「大行進、大行進」

4月5日

 作・演出:山下残
 出演:山下残、司辻有香
 舞台美術:カミイケタクヤ、舞台監督:浜村修司、
照明:吉田一弥、音響:奥村朋代
アトリエ劇研(京都市左京区)

Daikoushin_zan


「若手技術者の育成を主題に、劇場スタッフが講師として参加し、山下残の代表作を、若い技術者と共にリクリエーション」したもの、という公演の趣旨からして、線路を中心に、廃材をぶちまけた瓦礫のカオスのような会場であることを、不審にも思い、妙に納得できるようにも思いながら、開演を待つことになる。
作品「大行進」は、2010年に高松で初演され、角地で上演されたもので、京都では初の公演となるらしい。それを山下自身と司辻の異なるバージョンで二部構成で上演する。山下と司辻では、舞台美術が(構成要素はほぼ同じだが)大幅に変わっており、短い休憩時間の間に「舞台技術スタッフのためのワークショップ」受講生が転換に力を尽くすことになるわけだ。
作品は、山下らしい、一見ゆるい独白を主とするものだ。楽屋で司辻とどんな話に花を咲かせているかという話に始まり、突然舞台美術の小道具の置物を指差したり手に持ったりして「熊が暴れる」「鳥が落ちる」「魚が溺れる」などと大声で叫び、「大洪水!」「危ないですよ、皆さん、逃げてください」と観客に呼びかける。
もちろん、観客は誰も逃げたりしない。「大洪水は来ていない」という認識があること以上に、舞台空間の中で演者が口に出すことはフィクションだという先入観がある。これがもし、舞台監督の浜村さんが急に出てきて、会場の外に出るように促したら、観客は動いただろう。こういう観客への「揺らし」も山下の真骨頂だなと思いつつ、居心地が悪くなる。
また、長いはしごを使って天井近くまで上り、ネズミと叫び、はしごをドスドスと床に打ち付けるのだが、これが見ていて怖い。少し滑ったり手許が狂ったりしたら、倒れる。それを意識してか、執拗に、必要以上に露悪的なまでに打ち付けるのが過剰だ。
その後、線路を奥から四つん這いになって進んできて、「大火災」「大震災」と叫ぶ。何か危機的な状況であることを、根拠なく無理やりに口に出すことで現出させようとしている。先ほどの「逃げてください」に続いて、舞台での言葉の機能について、考えさせられるシーンである。
このはしごから線路までを長いピークとして、作品のテンションは緩やかにデクレシェンドしていく。いちごのど飴をばら撒いて「大地の恵み」と言いながら拾い集めたりする姿は、みごとに一貫して変な人であったわけだが、それが山下本人の佇まいと重ね合わされたり、微妙なずれを生じたりしていることを楽しむこともできる。作品の中のリアルとは何なのかという、「逃げてください」にも連なる戸惑いである。
注目の舞台転換は、前半は観客もそのまま公開の形で、後半は観客を劇場の外に出して行われた。なるほど、線路の向きが変わるなど、大幅な変更があり、それに伴って照明の吊り位置や向きも変えたのだろう。そもそも瓦礫、廃墟のような、秩序があることを意識しにくい状態が作られているということの面白さが感じられ、それに関わる人の顔も見えたのが、印象に残る構成だった。
後半の司辻は、ほぼ山下の構成をふまえ、なぞる形での上演でありながら、性差が強調されていたのは興味深かったし、ダルネスとでも呼んでよいだろうか、エッジを立てずにがむしゃらに押してくるような強さが山下の作風をよく吸収していると思われて、興味深かった。 (写真は、山下残のウェブサイトから)

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