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2015年7月13日 (月)

極東退屈道場「タイムズ」

4月24日

作:林慎一郎
演出・美術:佐藤信、振付:原和代
出演:あらいらあ、石橋和也、井尻智絵、小笠原聡、
後藤七重、猿渡美穂、中元志保、船戸香里
アイホール(伊丹市)
Times


 本作のOMS戯曲賞特別賞受賞を記念して、その審査員だった佐藤信 が「演出してみたいんだよね」といったことがきっかけで実現した公演。ベテランが若手(林は1977年生まれ)の作品を演出ということでも話題となった。佐藤の舞台美術が非常にシンプルですっきりしているのに比べると、劇の中身はずいぶん複雑なように見えた。芯のところでは、シンプルなロードムービー的な展開だといえるのかもしれないが、様々な仕掛けによっていろいろなことやものがどんどん見えなくなってくる。それを楽しむことができればこの劇は楽しい。
モノローグが多用され、いきなり脈絡の(見え)ないシーンが挿入され、不思議なラップのようなリズムに追い立てられて、さっきまでの場面がわからなくなる。林が「「昨日」と、「今日」と、「明日」と。」とプログラムに書いている時間軸の意識あるいは混乱が、言葉や演技によってではなく、劇の構成によって、観客の側で生成されるのが面白いといえるのだろう。
 タイトルは、コインパーキングの名前。場面はゼビウス から始まる。ゼビウスを「カンスト」 するまでの数時間、いかに尿意と戦うかという物語で、非常に面白い。ここで生じる期待が、仇にもなる。続いて帰宅困難者である女性たち。当然大災害の発生を想起させられるが、帰れない彼女たちが手に入れたものは未確認生命体(UMA)、馬だ。そして、横浜大洋ホエールズのスーパーカートリオ(俊足選手のトリオ。1番高木豊、2番加藤博一、3番屋鋪要)やポンセに話が及び、乗馬の連想で西部劇の場面へと転換、近松門左衛門「国姓爺合戦」を引用して路上で囲碁をしているから渋滞で前に進めないとか、帰れない人たち(帰宅困難者)を見せるのだが、必ずしもそれが主要なテーマでないだろうことを念押ししているようだ。
 このようにひっくり返したおもちゃ箱のような要素過多の状態ではあるが、そこに何らかの脈絡があるとすれば、かすかに細い糸を結ぶような言葉遊びのようなもので、それは一見すると場当たり的で、全体の統一性を顧慮していないようにも思える。設定されている以上に混乱して受け止められるのは、挿入されるエピソードの奔放ぶり以上に(エピソードのさなかは、ただ黙ってエピソードを楽しんでいればいいわけで、そうできる程度には楽しめるエピソードが連なっていた)、混沌を回収する意思がないような手放し感を受けるからだろう。そんな混沌をセリフのスピード、動き(ダンス)のキレが突き抜けていくのが快感となる。終わったときの疲労感とは別に、しばらくたって振り返ると、もう一度観るべきだったなと思ってしまう。

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