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2015年9月10日 (木)

実験劇場「ディシジョン・ポインツ」

2015年6月5日

 姉と妹(吉見英里・吉見理沙)
 高瀬瑤子・竹ち代毬也(原和代)
 Piece Dance(鈴木みかこ・井戸陽平、田岡和己)
 め~たんず(市川まや)

メイシアター小ホール(吹田市・泉町)
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 公募による3作品と、市民から出演者を公募した作品によるオムニバス公演。結果的にはコンテンポラリーダンス作品が揃ったが、募集に際しては身体表現を重んじるパフォーマンス作品ということになっていて、これまでの公演では、演劇やコントも含め、身体性が高いと自認する多様な団体が並んでいた。

 「姉と妹」というカンパニー名は、実際に吉見姉妹の出演によるもので、妹の理沙が構成・振付を担当。2人とも天理大学のダンス部で活躍していて、理沙が1年の時に英里が4年だったか。2人とも卒業してそれぞれの形でダンスを続けているようで、頼もしい。
 作品名は「不和の林檎―渇欲が私を赤く飾る―」。実は映像のトラブルがあって、2度上演することになったことは気の毒だったが、緊張感を保ってクオリティの高い作品であることがきちんと伝わった。悔しかったろうが、こちらとしても2回観れてよかったという面もある。姉妹共に身体の動きの線が、強さ、激しさの中に流麗な美しさを持っていて、思い切った落下や激しいコンタクトで観る者を引き込む魅力がある。茫漠とした草原の風景、デッサンなどの映像を使い、舞台上でもリンゴが重要なモチーフとなるなど、短い作品のわりには少し要素が多すぎるようにも思ったが、どれも鋭角で詩的な空気にまとめられており、求心力を保っていた。中でも、スケッチブックに鉛筆でデッサンするときの摩擦音のノイズが耳元で起きているように不気味で、切迫感があって効果的だったように思う。リンゴのやり取りで主体の混乱・撹乱を切実かつシンプルに描いて、よく練り込んだ作品になっていた。
 原の振付・演出、舩橋陽の音楽による「un face」は、昨年のこうべ全国洋舞コンクールで1位に輝いた美しいバレエダンサーである高瀬と、「新世界ゴールデンファイナンス」の金粉ダンサーでもある異形の小動物系の竹ち代という異色の組み合わせ。バレエダンサーでもあり演劇関係の振付やダンス指導も多い原は、竹ち代と十数年前にENTENというカンパニーにいたとはいえ、現在この3人を並べると、ダンスというジャンルの中では、かなり遠く離れた地点に点在している3人のように思われた。

Face_by_shimizutosihiro1

 高瀬と竹ち代が同じ舞台に立つと想像するだけで、可笑しかったのに、いざそれが実際に行われて、ユニゾンなど始まると、意外なほど成熟したいい雰囲気がある。背中を合わせて並んで座るからというだけではなくて、ここで意識されていたのは、背後の存在であったようだ。目に見えないもの、もしかしたら本当にないかもしれないものが、ないかもしれないからこそ一層の大きさで迫ってくる。椅子によって生じる面の高低をうまく使い、二人の関係の変化や不安定さが自然に現われていた。そのせいで、何かドラマティックなものを感じさせるのだが、それも当の二人が見ているドラマのようだ。しゃがんだり顔を覆ったりする動きが何種類かの(?)パターンで繰り返されるが、そこに二人の個性も現われる。竹ち代は時々仁王のように力を込める。そんなアクセントが時間の流れに楔を打つようだ。何を、何が、ということは言い難いが、遠くの激しい劇を盗み見してしまったような思いが残っている。ユニゾンというものの持つ距離について、しみじみと考えることができたように思う。(写真は原和代のFacebookから。撮影:清水俊洋)

 田岡和己の振付による「はさみさま」は、くしゃくしゃにした紙を山積みにした前で、両手の握りこぶしを突き出して「どっちだ?」の手遊びをするシーンから始まる。そのゲームから動きが始まり、ゲーム的なスピーディな展開が楽しいのだが、そのゲームに拘泥するのではなく、ちょっと距離をとっているように展開するのが、いい。指で中空に絵を書いたり、軽く鈴木がリフトされたり、遊戯的な要素が多用されているのだが、どこか一ヶ所に向かっているように思えず、主題がわかりにくくなっていくように思えた。「失くしたものを見つけてくれる「はさみさま」をテーマに忘れてしまっていた自分自身の心の中を思う」とプログラムには記されているのだが、「どっちだ?」等の既存の遊戯によるのではなく、何か別の動きを印象づけることで中心に向かっていくこともできたのではないだろうか。

 「め~たんず」というのは、「吹田市を中心とする5歳から40代までのダンス経験も人生経験も異なる12名。メイシアター30周年を祝い、踊るためにこの春、結成された」カンパニーだそうで、いわゆる素人によるコミュニティ・ダンスのカンパニー。Kyoto Dance Exchangeなどコミュニティ・ダンスに深く関わっている市川が振付・演出に加わった。「だるまさんがころんだ」から始まって、小さな女の子が天使のようになって指揮をしたり、ペアのコンタクトがあったり、王子様やおじ様ががんばって重要なポジションを務めたりと、参加者の個性を引き出したステージだったといえるだろう。何か核になるようなもう少し強い動きがあれば、一層達成感が強まったのではないだろうか。

Photo

(写真は出演・角谷有紀さんのFacebookから)

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