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2016年3月19日 (土)

宝塚歌劇団星組「大海賊」「Amour それは…」 

2015年7月4日
 
「大海賊」 作・演出:中村暁
「Amour それは…」 作・演出:岡田敬二
 主演:北翔海莉、妃海 風
 
梅田芸術劇場
 
Daikaioku
 
 柚希礼音・夢咲ねねの退団を受け、星組のトップとなった北翔海莉(ほくしょう・かいり)、妃海風(ひなみ・ふう)の事実上のお披露目となる全国ツアーの大阪公演。全国を回って最終地が大阪ということで、十分こなれた上で本拠地近くの上演となり、真価が問われる公演となったといえよう。
 
「大海賊」は2001年、当時の月組新トップスター紫吹淳(しぶき・じゅん)のお披露目公演として上演されたもので、北翔もこれに出演していた。カリブ海の小さな島の青年貴族エミリオ(北翔)が、イギリスの元海賊で軍司令官エドガー(十輝いりす)の非道な仕打ちに、最後は復讐を果たすというシンプルなお話。大雑把にいえば、エミリオの成長と闘争の物語であり、エミリオの少年から成人するまでの人間的成長、演技の変化がポイントとなる。成長の過程で、貴族の子弟から復讐のために海賊となったエミリオが、その首領になっていくという設定が、新トップ就任という現在の立場と重なるというのも興味深いところだ。
 
北翔、立派なものなのだ。以前から評価されているように、三拍子も四拍子もそろっていて、非の打ち所がない。それだけに、破綻というか、破裂的な凄みが出てくるかどうか、それは脚本や役柄にもよるだろうが、そんなものを欲してしまう。どこが、何がとは言いがたいのだが、「もっとできる、できるはず」と思わせてしまうところがあるように思うのは、ぼくが貪欲すぎるのだろうか。
 
同じくトップ娘役になった妃海は、トップ就任発表前後から急に、化粧を変えたのか表情に艶が出て、俄然美しくなり、上品さが出てきた。歌も演技もうまく、ダンスも問題ない、愛らしいいい娘役だ。変な言い方だが、いい意味で安定感…安住感という言葉を作ったほうが近いのだが、そういうものがないのがいい。不思議なことだが、トップ娘役になったことに、戸惑いを持っているように思えてしまうところが、演技に生かされている。自分の置かれた立場への、淡い違和感を抱えながら、受け入れざるを得ないという感覚を巧まずして表現できる役者は、なかなかいないのではないか。
 
海賊というチーム芝居でもあり、若手にも大きな役がついた。キッドの礼真琴(れい・まこと)が、海賊らしい荒っぽさ、スケールの大きさを出せていたところがいい。敵役の十碧(とあ)れいや、厳しい表情を的確に見せ、昨年末の『アルカサル~王城~』で格段の成長を遂げたのが、うまく繋がっていたように思う。
 
ショーの『Amour それは…』は、2009年の大和悠河のサヨナラ公演。率直に言って、こんなにいいショーだったかと、驚いた。岡田敬二のロマンチック・レビューは、もうこの時代には合わないのではないかと思ってしまっていたのだが、きっちりと実力のある正統派が芯を務めれば、ちゃんと求心性のある締まった舞台になるのだと感心した。中盤の北翔の客席に降りて懐かしいポップスをメドレーで歌う場面では、彼女のちょっと古風な正統派ぶりが、宝塚のコンサバなファンにはちょうど心地よいエンタテインメントとして成立し、もちろんトップ就任を祝う空間として、完璧に一体感を作れていた。
 
繰り返しになるが、果たして「がむしゃらな北翔」を、ぼくたちは観ることができるのだろうか。
 
 

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